プロテインやアミノ酸製剤の劣化を防ぐための保管方法とは?(上級編)

プロテインやアミノ酸製剤の劣化を防ぐための保管方法とは?(上級編)

プロテインやアミノ酸製剤の劣化を防ぐための保管方法とは?(上級編)

タンパク質製剤の劣化防止には、保存条件の最適化と安定化剤の適切な使用が不可欠です。主要な保存戦略を以下に整理します。

温度管理戦略
-80℃凍結:長期保存(1年以上)に最適で酵素活性の低下を最小化

-20℃凍結:凍結防止剤(25-50%グリセロール)添加で部分凍結を防止

4℃冷蔵:防腐剤(0.1%アジ化ナトリウム)とプロテアーゼ阻害剤カクテル添加で数週間安定

凍結乾燥:分解リスク最小化(再構成必要)

安定化添加剤

添加剤種類 濃度範囲 作用機序
還元剤(DTT/β-メルカプトエタノール) 1-5 mM チオール基の酸化防止
金属キレート剤(EDTA) 1-5 mM 金属イオン媒介酸化の阻害
糖類(トレハロース/スクロース) 5-10% (w/v) タンパク質構造安定化
キャリアタンパク質(BSA) 0.1-1 mg/mL 低濃度サンプルの吸着防止


実践的保存手法
1. アリコート処理

単回使用量ごとに分注(推奨量:100-500μl)

低吸着性ポリプロピレンチューブ使用で吸着損失を5%未満に抑制

液体窒素中でのビーズ凍結法:100μl滴下→凍結ビーズ回収

2. バッファー条件

pHをタンパク質の等電点(pI)±0.5以内に調整

緩衝液濃度:20-50 mM Tris-HClまたはリン酸緩衝液

塩濃度:150 mM NaCl以下で会合防止

3. 濃度管理

最適範囲:1-5 mg/mL(低濃度は分解促進、高濃度は会合リスク)

濃縮方法:アンモニウム硫酸沈殿または超遠心濃縮

品質維持チェックリスト
凍結融解サイクル(1回ごとに活性5-15%低下)の厳禁

遮光容器使用(UVカットバイアルで光酸化防止)

定期的な生物活性アッセイ(ED50測定でロット間比較)

保存容器内酸素置換(アルゴンガス充填で酸化率40%低減)

まとめ

市販プロテインとの共通対策として、シリカゲル添加による湿度管理(40%RH以下)とジッパー付き容器での密封保存が有効です。研究用試料ではプロテアーゼインヒビターカクテル(Thermo Scientific 89806)を添加することで、4℃保存時の安定性を2倍延伸可能と報告されています。

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