天然保湿因子の約4割はアミノ酸。冬の乾燥肌を“しくみ”から考える

天然保湿因子の約4割はアミノ酸。冬の乾燥肌を“しくみ”から考える

天然保湿因子の約4割はアミノ酸。冬の乾燥肌を“しくみ”から考える

朝晩の冷え込みが増し、暖房を使い始める季節になりました。洗顔後のつっぱり感や、手の甲・すねのかさつきが気になり始めた方も多いのではないでしょうか。じつは、肌の中で水分を抱え込んでいる成分の約4割は「アミノ酸」です。今回は、冬の乾燥肌を角層の“しくみ”から考えてみます。

冬の肌が乾きやすい理由
冬は外気の湿度が下がるうえ、暖房の効いた室内ではさらに空気が乾き、湿度が30%台まで下がることも珍しくありません。加えて、気温が下がると皮脂の分泌量も減り、肌表面を覆う皮脂膜が薄くなります。
その結果、肌の内側から外へ逃げていく水分、いわゆる「経表皮水分蒸散量(TEWL)」が増え、肌の表面にある角層の水分が保たれにくくなります。冬の乾燥肌とは、単に「水分が足りない」状態ではなく、「水分を抱え込み、逃がさない力」と「外へ奪われる力」のバランスが崩れた状態だといえます。

厚さ約0.02 mm、角層が担う「うるおいのしくみ」
肌のいちばん外側にある角層は、厚さわずか0.02 mmほど。食品用ラップフィルム程度の薄さですが、体の水分を保ち、外からの刺激を防ぐバリアとして重要な役割を果たしています。

角層のうるおいは、主に次の3つの要素によって支えられています。
1. 皮脂膜:肌の表面を覆い、水分の蒸発を抑える“ふた”の役割
2. 細胞間脂質:セラミドなどからなり、角層細胞のすき間を埋めて水分を挟み込む
3. 天然保湿因子(NMF):角層細胞の内部で、水分をつかまえて保持する

レンガ塀にたとえると、角層細胞がレンガ、細胞間脂質がレンガをつなぐセメント、そしてNMFはレンガそのものに含まれる“水を抱え込む素材”です。今回の主役は、この3つ目のNMFです。

天然保湿因子(NMF)の約4割はアミノ酸
NMFは、水になじみやすい低分子の成分が集まったもので、角層の水分保持に欠かせない存在です。その組成を調べた古典的な研究では、約4割を遊離アミノ酸が占めることが示されています。

成分

NMF中の割合(目安)

遊離アミノ酸

約40%

ピロリドンカルボン酸(PCA)

約12%

乳酸塩

約12%

尿素

約7%

ミネラル類(塩化物、ナトリウム、カリウムなど)

約18%

その他(糖類、有機酸、ペプチドなど)

約11%

さらに、2番目に多いPCAも、アミノ酸の一種であるグルタミン酸(グルタミン)から生じる成分です。つまり、NMFの半分以上は、アミノ酸とその仲間によって構成されているといえます。アミノ酸の中では、セリン、グリシン、アラニンなどが多く含まれています。

NMFは肌が自らつくっている
では、これらのアミノ酸はどこから来るのでしょうか。答えは「フィラグリン」というたんぱく質です。
表皮の細胞は、肌の奥で生まれてから少しずつ表面へ押し上げられ、最終的に角層細胞になります。その過程で、フィラグリンは角層の構造づくりに関わった後、角層の上層で酵素によって分解され、アミノ酸へと姿を変えます。これがNMFの主要な供給源です。このフィラグリンの分解は、角層の水分環境に応じて調節されていると考えられています。

つまり、肌のうるおいを支えるアミノ酸は、外から運ばれてくるものではなく、肌が日々のターンオーバーのなかで自らつくり出しているものです。冬の肌ケアの基本は、この「肌自身のしくみ」が働きやすい環境を整えることにあります。

NMFは「流れやすい」
NMFは水に溶けやすい性質を持つため、熱いお湯や長時間の入浴、洗浄力の強すぎる洗浄料によって、角層から流れ出しやすいという側面もあります。入浴後に肌が一時的にしっとりしても、その後かえって乾燥を感じやすいのはこのためです。乾燥しやすい季節ほど、「洗いすぎない」ことが大切になります。

肌の土台、真皮のコラーゲンもアミノ酸から
角層を含む表皮の下には、肌の土台となる「真皮」があります。真皮の主成分はコラーゲンで、水分を除いた重量の約7割を占めるといわれています。

コラーゲンは、グリシン・プロリン・ヒドロキシプロリンといったアミノ酸が規則正しく連なり、3本の鎖がらせん状により合わさった独特の構造を持つたんぱく質です。この繊維が網目状に張りめぐらされることで、真皮の構造が保たれています。なお、体内でコラーゲンがつくられる過程では、プロリンをヒドロキシプロリンへ変える反応にビタミンCが欠かせません。

表面の角層ではアミノ酸がNMFとしてうるおいを抱え、奥の真皮ではアミノ酸がコラーゲンとして土台を形づくる。肌は、表面から奥まで、アミノ酸によって支えられているのです。

「食べるコラーゲン」はどう考えればよいか
「コラーゲンは食べてもアミノ酸に分解されるだけ」という話を耳にしたことがある方もいるでしょう。たしかに、食べたコラーゲンがそのまま肌のコラーゲンになるわけではありません。
一方で近年、コラーゲンを低分子化したコラーゲンペプチドを摂取すると、プロリルヒドロキシプロリン(Pro-Hyp)などのジペプチドが、アミノ酸まで分解されきらずに血液中に現れることが報告されています。

こうしたペプチドが体内でどのような役割を果たすのかについては、現在も研究が進められている段階です。
いずれにしても、NMFのアミノ酸もコラーゲンも、もとをたどれば材料はたんぱく質です。特定の成分だけに注目するよりも、まずは毎日の食事で、たんぱく質を不足なくとることが基本になります。

“しくみ”から考える、冬の肌の過ごし方
ここまでのしくみを踏まえると、冬の肌ケアのポイントは「NMFを流しすぎない」「水分の蒸発を防ぐ」「材料をしっかりとる」の3つに整理できます。

1. 洗いすぎない
お湯の温度は38℃前後のぬるめを目安にし、長湯や熱いシャワーは控えめに。洗顔料やボディソープは、ココイルグルタミン酸Naなどのアミノ酸系洗浄成分を使ったマイルドなものを選ぶのもひとつの方法です。タオルでこすらず、押さえるように水気を取りましょう。

2. 保湿は「すぐに」「重ねて」
入浴や洗顔の後は、角層の水分が急速に失われやすいタイミングです。なるべく早く保湿剤を使いましょう。保湿剤には、セリンやPCA-NaなどNMFに含まれる成分を配合したものもあります。乾燥が気になる部位には、油分を含むクリームを重ねて“ふた”をするのも効果的です。

3. 室内の湿度を整える
加湿器などを活用し、室内の湿度は50〜60%程度を目安に保ちましょう。暖房の温風が直接肌に当たらないようにすることも大切です。

4. たんぱく質を毎食に
肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のいずれかを、毎食一品は取り入れることを意識しましょう。冬の鍋料理は、たんぱく質と、コラーゲンづくりに関わるビタミンCを含む野菜を一緒にとれる、季節ならではの選択肢です。

5. 睡眠時間を確保する
肌の細胞は日々入れ替わっています。年末に向けて忙しくなる時期こそ、十分な睡眠を心がけましょう。

おわりに
冬の乾燥は、湿度・気温・暮らし方が重なって起こる、季節に応じた肌の変化です。肌は自らアミノ酸をつくり出してうるおいを抱え込み、アミノ酸からなるコラーゲンで土台を支えています。
特別なことをするよりも、肌が本来持っているしくみを邪魔しない洗い方と保湿、そして材料となるたんぱく質をしっかりとる食事。この「外側」と「内側」の両面から、肌の冬支度を始めてみてはいかがでしょうか。

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