今改めて考える、WPCプロテインとEAA、どっちがいいの?

今改めて考える、WPCプロテインとEAA、どっちがいいの?

今改めて考える、WPCプロテインとEAA、どっちがいいの?

日常的に“タンパク質そのもの”を補いたい人には WPC が基本線。一方で、カロリーを極力抑えたい・消化負担を下げたい・1食で必要量が足りないときに“ピンポイントで同化反応を起こしたい”場面では EAA が強い味方です。目的と状況で“使い分ける”のが最適解。……要するに、ハンバーグ(WPC)と出汁(EAA)はどっちが偉い?という話に似ています。どちらも美味しいけど、役割が違うのです。

そもそも何が違う?
WPC(Whey Protein Concentrate)

中身:乾燥粉末のうちタンパク質80%前後(WPC80)。残りは乳糖・脂質などが少量含まれます。代表的な規格値ではタンパク質80–82%、乳糖4–8%、脂質4–8%といったレンジ。

特長:すべての必須アミノ酸(EAA)を自然な比率で含む**“完全タンパク質”**。ホエイはロイシン比率が高く、MPS(筋タンパク合成)を強力に促す“速い”タンパク質として古典的研究でも知られています。

留意点:乳糖が少し残る(WPC80で一般に数%)。乳糖に敏感な人はWPI(アイソレート)へ切り替えるとタンパク質≥90%で乳糖は最小化できます。

EAA(Essential Amino Acids)

中身:9種の必須アミノ酸を遊離アミノ酸の形で配合。消化分解が不要なので吸収が非常に速く、血中EAA濃度の立ち上がりが鋭いのが長所です。

特長:少量・低カロリーでMPSを起こせる。一方、“タンパク質”としての総量は増えないので、食事全体のタンパク不足は解決しません。

筋タンパク合成(MPS)の科学:ロイシン閾値と“量×質×タイミング”

ISSNの推奨:運動する成人では総タンパク質1.4–2.0 g/kg/日。1回量は**体重×0.25 g(おおむね20–40 g)**の高品質タンパクが目安で、ロイシン700–3000 mgを含むと良い、と整理されています。

ロイシン“スイッチ”仮説:とくに高齢者ではロイシン量の重要性が相対的に増す(いわゆるアナボリック・レジスタンス)。系統的レビューでも支持が厚いテーマです。

ホエイのロイシン含有:ホエイのロイシンはタンパクあたり≒10–11%。つまり20–25 gのホエイで概ね2–3 gロイシンに到達しやすい設計です。

EAAの“少量高効率”:6–12 g程度のEAA(ロイシン多め)でも、条件次第で25 gホエイに匹敵するMPSを引き出せることが示されています(6.25 gホエイ+ロイシンやEAA強化の古典的交差試験など)。

小噺:ロイシンはMPSの“点火プラグ”。ホエイはガソリン満タンの車、EAAは点火と必要燃料だけを携帯缶で持ち歩くイメージです。

吸収動態:速攻のEAA、持続の“速い”ホエイ

EAA:遊離アミノ酸なので吸収が最速 → 血中EAAが高く・鋭く上がる。短時間でMPSスイッチを押したい場面に向く。

ホエイ:カゼインより“速い”がEAAよりはやや緩やか。立ち上がりは早く、持続もそこそこで、実タンパク摂取を伴うため“材料の供給”も同時に満たせます。

長期の体組成(筋肥大)の観点

総量がものを言う:抵抗運動×タンパク補給のメタ解析では、総摂取が~1.6 g/kg/日を超えると筋肥大の上乗せ効果は頭打ち。つまり、日常のタンパク総量が十分ならEAAだけを足しても劇的な上積みは限定的です。

ただし例外も:エネルギー制限中や高齢者、食欲が落ちる日は、**EAAの“低カロリーで即効”**が総合的に有利になることがあります。

実務的な“使い分け”ガイド
1) 普段使い(リカバリー&増量期)

WPCを1回20–40 g(= 体重×0.25 g目安)を運動後や食間に。

乳糖が気になるならWPIに変更。≥90%タンパクで乳糖最小化の規格です。

2) 減量期・食欲がない・トレ直前直後

EAA 6–12 g(ロイシンを2–3 g含む配合)をトレ前後や食事が軽いタイミングに。低カロリーでMPSスイッチを押しやすい。

3) 1食のタンパクが足りない“ちょい足し”

例えば昼食のタンパクが少ない日はEAAで“足し算”、夜はWPCで実タンパクを確保——のような併用が効きます。

4) 高齢者・回復期

ロイシン強化EAAやホエイの十分量でロイシン閾値を確実に超える設計を。レビューでは高齢者ほどロイシンの割合が鍵。

5) 乳糖不耐

WPCは乳糖が残るので症状が出る人はWPI(またはEAA)へ。**WPIは“低乳糖で使われる原料”**として定義されています。

よくある誤解

「BCAAだけで十分?」
→ NO。BCAA単独では**“材料(他のEAA)”が不足してMPSは最大化しません。系統的レビューでもBCAA単独での“同化”主張は支持困難と結論づけられています。EAAか高品質タンパク(ホエイ等)**を選びましょう。

推奨プロトコル(目安)

総摂取:1.4–2.0 g/kg/日(競技強度やエネルギー収支で調整)。

1回量:体重×0.25 gのホエイ(20–40 g)。ロイシン0.7–3.0 g/回を目標(ホエイなら自然に届きやすい)。

EAA:6–12 g/回、ロイシン2–3 g/回配合を目安(高齢者はやや多めでも)。

タイミング:運動前後24時間は感受性が高い。3–4時間おきに均等配分できるとベター。

安全性と注意

健常な運動者では、上記レンジのタンパク摂取は安全とISSNは述べています(腎機能疾患など既往があれば医療者に相談)。

WPCの乳糖で消化器症状が出る人はWPI/EAAへ。製品ごとに成分は異なるためラベル確認を。

まとめ(超要約)

ふだんの主役:WPC(=完全タンパク・満腹感・コスパ・“材料”も補える)。

切り札:EAA(=低カロリー・速攻・食欲がない/減量期/高齢者での“上手な底上げ”)。

最強は“状況で使い分ける”。筋トレも栄養も、最後は“総量×質×継続”。毎日コツコツが、結局いちばん派手です(筋肉は静かな努力が大好物)。

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